怖さを無視して行動を変えると、かえって悩みが悪化することがある理由

こんにちは、心理セラピストの白鳥大介です!

「嫌われてもいいと思ってみよう」
「もっと人を頼ってみよう」
「言いたいことを我慢せず、伝えてみよう」

心理学の本やSNSなどで、こうした言葉を目にすることがあります。

確かに、考え方や行動を変えることは大切です。

今までと同じことを繰り返しているだけでは、現実もなかなか変わりません。

ただ、心の中に強い恐怖が残っている状態で、無理に思考や行動を変えようとすると、かえって悩みが深くなってしまうことがあります。

今回は、恐怖とはどんな感情なのか。

そして、行動した結果、

「やっぱり人は怖い」
「自分の気持ちは言わないほうがいい」

という確信が強くなってしまう仕組みについて解説します。

思考や行動を変えれば、悩みは解決するのか

最近は、心理について書かれた本や動画も増えました。

例えば、

  • 自己肯定感を高める方法
  • 人に嫌われることを恐れない方法
  • 人と楽に付き合う方法
  • 人に甘えたり頼ったりする方法
  • 自分の気持ちを伝える方法

などです。

そこでよく出てくるのが、

「自分は、それほど嫌われるような存在ではない」
「たとえ嫌われてもいいと許可してみよう」
「人や世界は、思っているより優しい」

と考えてみよう、という方法です。

そして実際に、

人の輪の中へ入ってみる。
誰かに助けを求めてみる。
職場の上司や同僚に、自分の意見を伝えてみる。

こうした行動がうまくいき、それまでの怖さが少しずつ薄れていく人もいます。

ただ、いつもうまくいくとは限りません。

勇気を出して話しかけたのに、そっけない態度を取られた。
助けを求めたけれど、断られた。
自分の気持ちを伝えたら、相手から強く言い返された。
「嫌われてもいい」と思おうとしたけれど、やっぱり怖かった。

そんなこともあります。

相手がどう感じ、どう反応するかまでは、自分では決められません。

その結果、

「やっぱり人は信用できない」
「自分の気持ちなんて言わないほうがいい」
「頼ったら傷つくだけだ」

という思いが、以前より強くなってしまうことがあります。

恐怖とは何か

恐怖は、自分に危険が迫っていると感じたときに出てくる感情です。

例えば、急に大きな音がしたり、目の前に危険な動物が現れたりすれば、身体が緊張します。

その場から逃げたくなったり、固まって動けなくなったりすることもあります。

これは、自分の身を守るための自然な反応です。

恐怖は、頭でじっくり考えてから出てくるとは限りません。

「あの人に嫌われるかもしれない」
「怒られるかもしれない」
「恥をかくかもしれない」

と感じた瞬間、頭では大丈夫だと分かっていても、身体が固まったり、言葉が出なくなったりすることがあります。

だから、

「怖くないと思おう」
「気にしないようにしよう」

と考えただけでは、恐怖が消えないこともあります。

ただし、思考が感情に関係しないわけではありません。

思考、感情、身体の反応、行動は、お互いに影響し合っています。

考え方を変えることで楽になる人もいれば、身体に強い恐怖が残っていて、考え方だけでは変化しにくい人もいます。

無理な行動が恐怖を強めてしまうことがある

例えば、人前で話すことに強い恐怖を感じる人がいたとします。

その人に、

「失敗しても死ぬわけじゃないから大丈夫」
「考えすぎず、思い切ってやってみればいい」

と言って、いきなり100人の前で話してもらったらどうなるでしょうか。

緊張しながらも話し終えて、

「怖かったけれど、意外と大丈夫だった」

と思えることもあります。

一方で、頭が真っ白になり、言葉が出なくなってしまうこともあります。

そのとき周囲から笑われたり、強く責められたりすれば、

「人前で話すと恥をかく」
「失敗したら居場所がなくなる」

という恐怖が、以前より強くなる可能性があります。

すると、次からはさらに人前を避けるようになります。

避けると、その瞬間は少し安心できます。

その安心によって、「人前を避ける」という行動が繰り返されやすくなります。

この記事では、こうして恐怖や回避が以前より強くなっていく流れを、分かりやすく「恐怖の強化」と呼びます。

「やっぱり嫌われる」という証拠集めになる

人の顔色を気にして、自分の意見を言えない人がいたとします。

本人の中には、

「本音を言ったら嫌われる」

という恐怖があります。

そこで、「言いたいことは、はっきり言ったほうがいい」という情報を見て、いきなり相手に強い言い方で不満をぶつけたとします。

相手も腹を立てて、強く言い返してきました。

すると本人の中では、

「やっぱり本音を言うと嫌われる」

という確信が強くなります。

ただ、ここで起きている問題は、必ずしも「本音を言ったこと」ではありません。

  • 伝える相手やタイミングは適切だったか
  • いきなり我慢していたものを全部ぶつけていないか
  • 相手が安全に話し合える人だったか
  • 自分を落ち着かせたり支えてくれるものがあったか
  • 相手の反応をどう受け止めたか

など、いくつもの要素が関係しています。

ところが、恐怖が強いと、

「やっぱり自分の気持ちは言ってはいけない」

という部分だけが強く記憶に残ります。

こうして、自分がもともと持っていた怖さを証明するような経験を重ねてしまうことがあります。

恐怖が強い人にいきなり行動を促すことが危険な理由

もちろん、最終的には自分の行動が変わらなければ、現実も変わっていかないことがあります。

ただ、トラウマによる恐怖が強い人に、

「怖くてもやってみよう」
「まずは小さなことから挑戦してみよう」

と行動を促すことが、必ずしもよいとは限りません。

周りから見れば小さな行動でも、本人の心にとっては、かなり大きな危険として感じられていることがあるからです。

例えば、

人に簡単な質問をする。
頼まれたことを一度断る。
自分の意見を一言伝える。

こうした行動も、過去にそれをしたことで怒られたり、無視されたり、傷ついた経験がある人にとっては、決して小さなことではありません。

頭では、

「これくらい大丈夫」
「相手もそんなに怒らない」

と分かっていても、心や身体は過去の危険を覚えています。

その状態で無理に行動し、実際に相手から嫌な顔をされたり、断られたり、強く言い返されたりすると、

「やっぱり人を頼ってはいけない」
「自分の気持ちは言わないほうがいい」
「人と関わると傷つく」

という恐怖が、以前より強くなってしまうことがあります。

これが、僕がこの記事で伝えたい「恐怖の強化」です。

行動を変えるより先に、トラウマや恐怖を癒す

行動できない人を見ると、

「考えすぎずにやってみたらいい」
「勇気を出して一歩踏み出そう」

と言いたくなるかもしれません。

本人も、

「これくらいできないとダメだ」
「いつまでも怖がっている自分を変えなければ」

と思っていることがあります。

でも、行動できないのは、単に勇気が足りないからとは限りません。

その人の心が、

「それをしたら、また傷つく」
「嫌われたら、ここにいられなくなる」
「助けを求めても、どうせ誰も応えてくれない」

と感じて、自分を守っていることがあります。

この恐怖が強い人に必要なのは、行動を急かすことよりも、まず、その恐怖がどこから来ているのかを丁寧に見ていくことです。

何を怖がっているのか。
過去にどんなことがあったのか。
そのとき、本当はどうしてほしかったのか。

何を我慢し、どんな気持ちを感じないようにしてきたのか。

こうした過去の体験や、そこに残っている感情を心理セラピーなどで扱っていくことで、現在の出来事に対する恐怖の感じ方が変わっていきます。

過去の経験が現在の恐怖に影響していることもある

例えば、人の顔色をうかがい、自分の気持ちを言えない人の中には、子どもの頃から家族の機嫌を気にしてきた人もいます。

  • 気持ちを言うと怒られた
  • 話を聞いてもらえなかった
  • 泣いたり怒ったりすると無視された
  • 「いい子なんだから我慢しなさい」と言われた
  • 親の機嫌が悪くならないように振る舞っていた

といった経験です。

こうした経験が続けば、

「自分の気持ちを出すと危険」
「人を頼っても応えてもらえない」

と感じるようになることがあります。

もちろん、現在の恐怖がすべて親子関係だけで説明できるわけではありません。

学校でのいじめや、人間関係での裏切り、職場で傷ついた経験などが影響していることもあります。

ただ、僕がこれまでセッションでさまざまな方のお話を聞いてきた中では、今の生き方の土台に、幼少期の親子関係が大きく影響しているケースはとても多いです。

大切なのは、表面に出ている行動だけを変えようとするのではなく、その行動の奥に、どんな恐怖や過去の体験があるのかを見ることです。

怖くなったときに戻れる安全基地を作る

トラウマや恐怖を扱っていくときには、安心して戻れる人や場所も必要です。

心理学では、怖いことがあっても安心して戻ることができ、そこからまた外の世界へ出ていけるような関係を「安全基地(セキュアベース)」と呼びます。

安全基地になるのは、家族とは限りません。

信頼できる友人やパートナー、支援者、カウンセラーやセラピストなどが、その役割になることもあります。

「怖がらずに行動しなければいけない」

ではなく、

「怖くなったときに、一人で抱え込まなくてもいい」

という感覚が育っていく。

それによって、これまで危険だと感じていたことが、少しずつ危険ではなくなっていきます。

行動を変えることより、安心感を育てること

人に頼れない。
嫌なことを断れない。
自分の意見を言えない。
人と親密になるのが怖い。

こうした悩みがあると、できない行動ばかりが目につきます。

そして、

「もっと人を頼らなければ」
「ちゃんと断らなければ」
「自分の気持ちを言わなければ」

と、行動を変えようとします。

でも、その行動ができないのには、何かしらの理由があります。

過去に傷ついた経験があり、今も心が「危険だ」と感じているなら、必要なのは行動を急かすことではありません。

まずは、その恐怖を作った過去の体験や感情を癒し、安心感を育てていくことです。

恐怖が薄くなり、安心感が育ってくると、以前はできなかったことが、意識しなくても自然とできるようになってきます。

頑張って無理やり行動を変えたのではなく、気づいたら人を頼れていた。

以前ならずっと我慢していた場面で、自然と「それは嫌です」と言えていた。

相手の顔色が、前ほど気にならなくなっていた。

僕は、この「気づいたら、自然と行動できていた」という変化が大切だと思っています。

「行動しなければ」と自分を追い立てなくても、安心感が育つことで、必要な場面で自然と違う反応ができるようになる。

そのために、行動を変えることより先に、トラウマや恐怖を癒していくことが必要なのだと思います。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ABOUTこの記事をかいた人

対人恐怖、自己否定など心の問題や悩みの根本解決をサポートする心理カウンセラー・心理セラピスト 札幌を拠点に全国で活動中。 生き辛さやしんどさの根本原因を見つけて、心の安心と本来の自信に満ち溢れた自由で幸せな人生を取り戻すサポートをしている。